緑の防潮堤 9月8・9日、神戸市のポートアイランドで自治体災害対策全国会議が開かれ、実行委員の一人として参加してきました。 開催地は、全域が埋め立て地でもあり、阪神淡路大震災の折には、液状化に見舞われた所です。 私は阪神淡路大震災直後に現地に入り、液状化を体感しましたが、あれから16年が経ち、当時を窺わせる被災の爪痕は見られず、復興の状況を目の当たりにしました。 改めて、時の経過と共に復興に向けた不断の努力が成し得たものと感じましたが、本格的な復興へ動き始めた浦安市にとって、大きな希望をもらって帰ってきました。 10月に入りましたが、私が現在最も恐れているのが台風です。 境川や見明川の護岸など、河川堤防が被災で迫り出しているのを目にしている方も多いと思いますが、あまり人目に触れない日の出地区の海岸護岸は約800mにわたり、エプロン部分が約3m海側に迫り出し、コンクリートの堤防が大きく波打つと共に、一部では断裂しているのが現在の状況です。 私が心配するのは、台風襲来時と満潮時が重なった場合、高潮により海水面が上昇して陸域に浸水することです。 今回の大震災で東北3県の大津波による空前の被害をテレビなどで見て、浦安市における津波の心配をされる方が多く、さまざまな場面で質問や不安の声を聞きます。 浦安市の護岸は、高潮対策として東京湾前面の海岸部についてはA・P(荒川水準点)7.1mの堤防で、河川については、A・P5.6mの高さの堤防で守られています。 浦安市の津波に関しては、1703年の元禄地震の際、約2mの津波が来たとの記録がありますが、今回の地震でも日の出護岸付近では1m程度の津波が到達し、猫実川を遡上した津波は、猫実排水機場で高さ約2.1mを計測しました。 現在の浦安市を守る護岸の高さは、過去最大の伊勢湾台風時の高潮3.0mを想定した高潮対策として整備されているものです。 津波については、東京湾北部を震源域とするマグニチュード7.3の首都直下地震が発生した場合で、最大で津波の高さが50cm未満程度であるとされています。 浦安市の安全が、現在、コンクリート堤防の断裂で、風前の灯の観を見せている中で、大きく意識の転換が迫られています。 絶対に大丈夫と思われた東北地方の海岸部の護岸が壊滅的な被害を受けた姿にショックを受けたのは私だけではないと思います。 そのような時、元国際生態学会会長で、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生から、瓦礫を活用した「森の防波堤」プランが提唱されました。 これは、強固と思われたコンクリート護岸の神話がもろくも崩れたのに反して、土地本来の植生に基づいた「ほんものの森」が、大震災による巨大津波にも負けず、生き残ったことに着目し、液状化により噴出した土砂や、道路復旧などで出る瓦礫などを用いて土塁を築き、直根性で深根性のタブノキ、シイ、カシなどの常緑広葉樹林をつくろうというものです。 実はこの発想は日本中にある鎮守の杜や、仙台地方に見られる「居久根林」と呼ばれる防災林などと同じ発想によるものです。 具体的にはこれから「ふるさと復興市民会議」に提案させていただこうと思っていますが、現在83歳で若者顔負けの元気さで世界を飛び歩き、国内外1700カ所以上で、4000万本以上の木を植えてきた宮脇先生の迫力には圧倒されるものがあり、傾聴に値するものと私は思っています。
浦安市長 松崎秀樹 |