下水道の危機管理を考える 早いものであの大震災から1年が経とうとしています。 市では、来る4月1日からの平成24年度を「復興元年」と位置づけていますが、この3月中に、浦安市議会の「東日本大震災復旧・復興に関する特別委員会」からの提言や、「ふるさと浦安復興市民会議」からの市民サイドの提言をそれぞれ頂くことになっています。そして、さらに、昨年から熱心に審議が続けられている「浦安市復興計画検討委員会」から、特別委員会や市民会議からの提言を踏まえた復興計画案が示されることにより、いよいよ本格的な復興に向かうことになります。 1周年を迎える今、切迫性が伝えられる首都直下地震に備えるために私が最も懸念していることは、今回の震災で痛感した都市災害における下水道の脆弱さです。 私を含め市では、今まで一極集中に何の疑問も持たず広域下水道事業を進めてきました。 3月11日から4月15日の36日間の応急復旧完了までの期間は、いわば下水道の復旧期間でもありました。この間、災害用組立トイレや、工事用仮設トイレなど800基以上設置しましたが、原始的ともいえる「便袋」約30万枚を下水道の使用制限をかけた家庭に配布したことで苦痛に近い苦労を強いざるを得なかったことは、私の最も辛いことの一つでした。 今回、幸いだったのは市の下水道処理を一手に受けている行徳地区にある江戸川左岸流域下水道の終末処理場がほとんど被害を受けていなかったことです。 もし、終末処理場が深刻なダメージを受けていたならば、とても応急復旧の完了が36日間では済まなかったと容易に想像できます。 下水道の危機管理とは一体何だろう、また何か別の施策が考えられるのだろうかと、思いを巡らせた時にふと思い出したのが、数年前の首長連携交流会で福島県会津坂下町の竹内町長が新しい下水道のあり方を提案していたことです。 すぐに竹内町長に連絡を取り、11月1日に会津坂下町の下水道施設を2カ所視察させてもらいました。 人口約1万7千人の農村地帯で、中心市街地に人口が集中し、周辺に小さな集落が点在している町です。 町では、下水道計画の立案に当たり、中心市街地を三分割して2千人から4千人ずつの自己完結型の下水道事業がより効率的との結論に達し、災害に強く、環境にも優しい「土壌浄化法」に行き着いたとのことです。 「土壌浄化法」とは、バクテリアなどの土壌微生物を付着させた濾材を充填した水路型の水槽に、汚水を流し浄化させる方式です。処理水槽は特殊な土壌で覆われているため、悪臭などの2次公害を簡単に防止できるだけでなく、地下に埋設した処理場の上を芝生などで緑化し、憩いの空間にする事も可能です。 この方式は、特殊な機械や設備を必要としないため維持管理が容易で、会津坂下町の1施設では5年の短期間で黒字化を実現したとのことです。 北欧でも、広域下水道については見直されており、自己完結型のバイオトイレなどの普及が始まったとのことです。 今後、非常時にも強いトイレや下水道のあり方を真剣に模索したいと思っています。
浦安市長 松崎秀樹 |