瓦礫 先日、米紙ワシントン・ポスト元東京特派員のポール・ブルースティン氏が、東北の瓦礫を国内各地の自治体が受け入れを拒否している問題を取り上げ、「日本の絆の精神は色あせた」と同紙に寄稿したと産經新聞で報じられました。 私はこの報道に接し、やるせない気持ちと強い憤懣の思いがない交ぜになった悔しさを感じました。 ここ半年ほど、浦安市としても東北の瓦礫問題に対して、同じ被災地ではありながらも何とか協力できないものかと悶々としてきました。 東日本大震災による東北地方の瓦礫は、約2,600万tとも言われ、最も多い宮城県では約1,569万tで同県の一般廃棄物の19年分、次いで岩手県の約476万tでやはり11年分に相当し、急がれている復旧・復興の大きな妨げになっています。 浦安市でも3月11日の大震災で、市域の86%が液状化し、約75,000㎥の土砂が噴出しました。さらに応急復旧の道路工事などによる瓦礫も約2,000t出ましたが、これらを利用して高潮・津波に対する究極の防御策としての“緑の防潮堤”づくりを計画し、その第一歩として、昨年の12月18日、高洲海浜公園の一部を利用して第1回植樹祭を開催したところ、こどもたちも交えた約500名の市民の参加の下で成功裏に終わりました。 この緑の防潮堤構想のご指導をいただいているのが、国際生態学センター長で、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生です。 宮脇先生は、国内外1,700カ所以上で植樹指導を行い、今までに4,000万本以上の木を植えてきた植樹の第一人者です。 3月3日、宮城県仙台市で行われた宮脇先生主催の森づくりシンポジウムで、本市の第1回植樹祭の報告をしてきましたが、その席でドイツから来られていたハノーバー大学のリチャード・ポット教授が、「資源でもある瓦礫を焼却処分するのは、先進国では日本だけであり、ドイツでは法律で規制され、違反すると罰せられる」と日本の瓦礫処理に対して、強く非難されました。 私は東北の瓦礫問題を考えるときに常に何かもやもやしたものを感じていましたが、ポット教授の話を聞いてそれは氷解しました。 未曾有の津波によって瞬時に瓦礫と化してしまったものは、その直前まで住民の生活そのものであり、被災者にとって思い出そのものではないのかとの思いが、常に私の頭の中にあり、それを燃やしてゴミとして処分するべきではないということです。 今、さまざまな自治体で瓦礫を焼却処分して、産業廃棄物として最終処分場で処理をすることが議論されていますが、本市のように焼却後の最終残渣を市内処理できず、他市に処理をお願いしている自治体では瓦礫処理の協力をしようにも叶いません。 しかし、瓦礫を資源として考えるならば、新たな展望が開けると思っています。 今、さまざまな視点から調査・検討を始めたところですが、何とか東北の被災地の力になれないものか試行錯誤しながら、本市の復興とともに考え続けています。
浦安市長 松崎秀樹 |