プリンセス・バンク 6月11日、順天堂大学の産婦人科の教授で医学部附属浦安病院の吉田院長、同じくがん治療センター長の野島教授と、不妊治療が専門の菊地先任准教授の先生方から、高度不妊治療と、卵子・卵巣凍結保存バンクの〝プリンセス・バンク・センター〟構想について、スライドを使いながら、ご提案をいただきました。 この構想の元になるのは〝卵子・卵巣の凍結保存技術〟です。 これは、若年女性のがん患者の治療に際しては、抗がん剤の投与や放射線療法が、卵子を死滅させてしまうというリスクが伴うそうですが、治療を開始する前に、卵子や卵巣を採取し凍結保存して、治療が終わった後に、体内に戻すという、がん患者に妊娠・出産の望みをつなぐ画期的な技術です。大学の倫理委員会でも承認され、既に成功例も新聞報道されています。 さらに注目したのは、この技術を使って、将来母親になるときに備えて、若い卵子を保存しておこうという提案です。 菊地先生から示されたスライドで、①卵子の数は胎児期がピークで、誕生後、年齢とともに減少と老化が避けられないということ ②卵子・卵巣の凍結保存技術は、日本が開発したこと ③日本は、世界一の体外受精大国で、年間3万児が体外受精で誕生しており、34児のうちの1児が体外受精児で、今まで30万人のこどもが誕生していること ④年間30万人の女性が体外受精を実施しているが、出産率は10%と低いこと などを、知りました。 ④の出産率が10%と低いのは、体外受精時の平均採卵年齢が39歳と、比較的高いことが大きな原因で、34歳まで下げると20%と確率が高まることが、統計的に証明されています。 そういった意味では、近年、日本産科婦人科学会が18歳から26歳までを〝出産適齢期〟と啓発し始めたこととも、ある程度合致しており、学会の統計データでも、〝年齢は不妊の最大リスク因子〟とのことです。 晩婚化により、晩産化が進んでいる中で、20歳から34歳までの卵子を凍結保存しておき、結婚後、体内に戻して、妊娠そして無事に出産までを保とうというものです。 手術は、卵子がたくさん詰まっている卵巣の保存ですら、全身麻酔の後、お臍から卵子を採取して30分程度で終わり、術後は1日ほど安静にして退院できるようです。また、卵子のみの採取であれば、外来ですむそうです。 私は、今年の1月から子育て中の女性や男性、また、幼稚園・保育園、NPO などで子育ての現場の方々と、幾度となく話し合ってきました。 これは、今日、国家的な課題でもある〝少子化対策〟に向けて、「こどもが産めない壁は?」あるいは、「産まない理由」について、伺ってきたものです。 その中で、不妊治療を行っている方や、現在不妊治療を行うか、真剣に検討している方が、想像以上に多かったこと、さらに、第1子あるいは第2子は産まれたものの、次のこどもが産まれないことで、不妊治療をされている方も多いことに驚かされました。 「受精前の卵子はすべて女の子」と言われており、名称もぴったりの〝プリンセス・バンク・センター〟で、卵子・卵巣凍結技術により34歳までの「妊活サポート」と、さらに35歳以上の女性の妊娠・出産のリスクを少しでも減らすための「妊活サポート」に向けて、不妊治療技術の先頭を走る順天堂大学と、少子化対策に全力で取り組んでいる浦安市だから成し得る構想だと、私自身、今後の展開に大きく胸を膨らませています。
浦安市長 松崎秀樹 |