「子ども手当」問題 昨年の年の瀬も押し迫った12月23日、天皇誕生日の祝日でしたが、都心に9市1村の首長が集まりました。 平成23年度の国の予算編成に当たり、「子ども手当」の財源の一部を地方負担とする国の方針に疑問を持つ「現場から国を変える首長の会」の緊急会合でした。 一昨年の総選挙で本格的な政権交代を果たしましたが、その際、一律2万6000円を支給するという「子ども手当」は、民主党のマニフェストの目玉でもありました。 しかし、満額を支給した場合、総額は防衛費の4兆7000億円を上回る5兆3000億円にもなるとのことで、当初から財源についての不安が言われていました。 不足の財源を地方に負担させるとした平成22年度は、初年度でもあり制度設計も間に合わなかったことや、児童手当との混在もあったこと、さらに23年度は全額国が負担するとの総理や各大臣の度重なる発言や国会での答弁もあり、1年限りであると信じ、不本意ながらも従うことにしました。 国でも地方でも同じ税金ではないかという人もいますが、そもそも国の役割と、住民自治と地域住民の福祉の向上を目指す地方自治体の使命は明確に違わなければなりません。 全国一律で市町村の裁量が働かない「現金給付」は、国の財布いわゆる国庫から負担するべきものとされています。 それに対して市町村がそれぞれの地域性や市民ニーズによって、工夫をしながら施策や事業を通して行う行政サービスを「現物給付」と言い、このために使われる税金が地方税の中でも最も重要な「住民税」で、「行政サービスの費用」とも言われるのはこのためです。 この住民税は、自治体固有の財源であり、財源が足らないからと言って、国の強権でもって住民税で不足分を補うことは、憲法で保障された地方自治体の自主財政権を侵害する暴挙であると言わざるを得ません。 さらには、国と地方財政のあり方を規定した「地方財政法(地財法)」には、第2条で、「国は、いやしくも地方公共団体の自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」と明確に謳(ルビ:うた)われ、地方財政法違反であることも明白です。 このことから平成23年度の予算編成に当たり、市では国の暴挙に対して唯々諾々と従うのではなく、「子ども手当」を対象の市民には全額支給するものの、市の負担分については、本来である国庫負担金として計上することにしました。 この筋を通そうとしている自治体はごく少数で、県内54市町村の中でも浦安市と千葉市だけです。 このことは地方分権の時代と言われながらも、まだまだ国と地方の力関係が影を落としていることを表しています。 国会での予算審議に向けて、市として今回の措置に対する不服の意見書を内閣を経由して国会に提出しますが、この法的手段は過去60年間行われたことがないもので、市の意見書を受け取った内閣は、意見を添えて遅滞なく国会に提出しなければならず、国会の予算審議の末に、間違いなくよい結果をもたらしてくれるものと、私は固く信じています。
浦安市長 松崎秀樹 |