未来からのミッション 猛暑の8月がようやく終わりました。 浦安市の子どもたちは、この夏もさまざまな体験をしたことと思われます。 私も、8月19日から21日まで、〝ふるさとうらやす立志塾〟で、市内9中学校の27人の生徒と宮城県石巻市と女川町、さらに福島県広野町に行ってきました。 この事業は、東日本大震災の起きた平成23年度から始めた事業で、今年で5回目になります。 あの震災で私たちの浦安市は、液状化被災により上下水道などのライフラインは壊滅的な被害を受けましたが、幸い死者も倒壊家屋もゼロでした。 それに対して、東北地方は千年に一度という大津波で死者・行方不明者が1万8000人という未曾有の大惨事となりました。 このような時代に生まれ合わせた子どもたちに現実をしっかりと認識させ、次代を担うために今、何をすべきかを考えてもらうために、そして甚大な被害が出た被災地に子どもたちを立たせ、想像力を働かせることで、子どもたちは変われると信じて、これからのリーダーを今から育てようと、この事業を始めました。 今年の市立中学校9校の内、7校の生徒会長が昨年の立志塾の参加者です。 今年の立志塾は、74人の児童が津波で亡くなった大川小学校を最初に訪れ、その後、昨年と同様に石巻市や女川町の仮設住宅や、被災現場を視察すると共に、被災された方々に当時の状況を語っていただきました。 今年は、あの震災で放射能汚染をもたらし、今現在も福島県庁の調べで、県の内外に約11万人も避難者を生んでいる〝福島第1原子力発電所事故〟の現実を、どうしたら子どもたちに伝えられるのか検討しました。 その結果、足を踏み入れることができない「帰還困難区域」や、「居住制限区域」は元より除外し、20キロメートル圏内の「避難指示解除準備区域」からも外れている福島県双葉郡広野町を訪れ、人の住んでいない住宅街を垣間見ると共に、被災地に隣り合わせて暮らし、先の見えない復興に向けて今も苦しむ姿に触れてきました。 震災前には、双葉郡の6町2村には約6万5000人が住み、高校も5校あり、約1500人の高校生が通学していたとのことです。 現在この5校は、いずれも避難指示区域内ということで休校しており、代わりに広野町に〝福島県立ふたば未来学園高等学校〟が文部科学省のスーパーグローバルハイスクールに指定され、今年の4月に新たに152人の1年生を迎えて開校しました。 今回の立志塾の塾生は、開校間もないふたば未来学園高校の1室で、「自分たちから復興を」と語る元気な4人の高校生、丹野純一校長や先生方と、2時間近く中身の濃い交流をしました。 年齢も近いリーダーの高校生を中心に4つのグループに分かれて、それぞれの思いを語り合っている姿を見て、丹野校長先生は「震災や原発事故で、多くのものを失ったからこそ他ではできないことを可能にしている。まさに〝ふたば未来学園高校〟は、未来への挑戦です。」と塾生に語ってくれました。 高度成長期以後、東京に電力を送る電源地帯としてその役割を担ってきて、今、地震・津波・原発事故と、三重苦に喘ぐ福島県民の苦しみは、他人事ではなく、原発を始め今の日本を取り巻くさまざまな解決困難な課題は、同じ時代に生きる私たちに課せられた〝未来からの使命・ミッション〟ではないでしょうか。 塾生たちを3日間見つめ、深い感慨の中で帰宅の途につきました。
浦安市長 松崎秀樹 |