「周産期のセーフティーネット」 昨年の10月、出産間近の都内の女性が、体調不良で救急車を呼んだものの、8カ所の病院で受け入れを拒否されたあげく、赤ちゃんを出産後に脳内出血で死亡し、大きな社会問題になった事件はまだ記憶に新しいと思います。 この問題は、当初救急搬送を断った都立病院が、東京都からリスクが高い新生児と妊婦に24時間対応が求められていた「総合周産期母子医療センター」に指定されていたことから、大きな批判を浴びました。 受け入れを断った理由は、当直医師が足りなかったためでした。そして、初動から1時間以上経過した末に、当直以外の医師を緊急に呼び出し、受け入れを決めたとのことです。 このような問題は、一昨年にも奈良県で起き、また平成18年には千葉県で、救急搬送を16回も断られた末に、死産させるといった事件も起きています。 奈良県では、当直医師2名が一睡もしないまま、翌日の業務に就くといった現場の過酷な状況が、また千葉県の事例は、妊婦健診を受けていなかったことも問題になりました。 出産前後の期間、妊娠22週から生後7日未満を「周産期」と呼び、国でも周産期医療を遅まきながら重視しはじめました。市としても、浦安市民のセーフティーネットを考えたとき、国や県任せではなく、何かできることはないかと、模索していた折りの昨年の11月、日本母性衛生学会の総会が舞浜のホテルで開かれました。 その懇親会で同席したのが、運良く国立成育センターや、順天堂大学・自治医科大学など、産科学会のそうそうたる教授陣でした。 懇談で私が、今浦安市としてできることはないかと先生方に尋ねたところ、周産期医療のなかでも、最たる不採算部門と言われる「新生児集中治療室(NICU)」と、母体救急のベッドを確保して、市民を優先的に受け入れるために、「空床保障」の助成をするべきとの提案をいただきました。 さらに、浦安市が先鞭をつけ全国の市町村が、周産期救急の充実に関与すべきだとの意見も伺いました。 これを受け、順天堂大学附属浦安病院と話し合いをした結果、究極のセーフティーネットとして、新生児救急と、母体救急のためのベッドを1床ずつ確保し、365日稼働した場合に要する診療報酬の半額を運営費として保障する契約を結ぼうと、その経費を平成21年度の予算案に盛り込みました。 この助成は、医師の確保が難しいといわれる周産期の分野を市として積極的に支援することで、今後のNICUの増床や、医師の安定確保につながればとの期待も込められています。 さらに、妊婦健診の助成を、今までの5回から14回まで無料で受けられるよう、予算化し、議会に諮っているところです。
浦安市長 松崎秀樹 |